村上春樹のデビュー作ー村上春樹 【風の歌を聴け】を読んでみた

「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」

 
すべての始まりはこの書き出しで始まる。
この書き出しに村上春樹の自身の作家としての信念というかスタンスが集約されているように思える。
他者と分かり合えることはできるのだろうか。
完璧に分かり合えることなんて不可能だ、でも全く分かり合えないこともない。
村上春樹自身、人間の不完全性を自覚し、それでいてすべてを悲観するわけでもない、そういった人生観を持っているのではないか。
 
本作品ではデビュー作でありながら村上春樹らしい淡々とした文章、お洒落な風景描写と音楽が作品全体に散りばめられている。
村上春樹特有の、音楽と猫を愛し、脱力的でそれでいて何もしなくても仕事と女が常にいる、そういった主人公像がこの作品にも表れているが、ともすれば読者までこういう生き方でいいのだと自己納得してしまうような危険なものでもあると思う。
現実的には自分で自ら行動しない限り、物事は前には進まないのだ。