自己啓発書の古典的名著ーベンジャミン・フランクリン【フランクリン自伝】

 

フランクリン自伝 (岩波文庫)

フランクリン自伝 (岩波文庫)

 

 ベンジャミン・フランクリンとは何者なのだろうか。

これに一言で答えるのは容易ではないほどにフランクリンは様々な分野で活躍し、偉業を成してきた。
しかし、一言で(敢えて)表現するならばベンジャミン・フランクリンとはアメリカンドリームの生みの親と言える。
 
アメリカ合衆国の政治家として、外交官として、時には著述家として、さらには避雷針やストーブの発明をするといった科学者としての側面もある人物だった。
 
フランクリンはアメリカの100$紙幣にもなっている。
アメリカ初代大統領のジョージ・ワシントンの1$紙幣や有名なリンカーンの5$紙幣よりも値段の高い100$紙幣になっているのだから、その評価の高さが伝わってくる。さて、様々な経歴と業績を持つフランクリンだが、本書の内容についても少し触れていきたい。フランクリンが若き頃に、どのような考えを持ち、どのような生活をしていたか、をである。

実はフランクリンは後にアイビーリーグと呼ばれるアメリカ名門大学の一つであるペンシルバニア大学を創立するが、フランクリン自身は学校教育を10歳で終えている。
これは学校に通うよりも働かねばならない当時の背景があったからである。

フランクリンは12歳頃から兄の下で印刷出版の見習いとして働き始める。
大の読書好きであったフランクリンは仕事に精を出す傍らで、仕事前の早朝や仕事後の夜遅くに読書をしたり文章の書き方を学んでいく。
最初は兄の下で働いていたフランクリンだったが、兄との度重なる喧嘩をきっかけに、自分の生まれ育ったボストンを離れる決意をする。この時弱冠17歳だった。
最初はニューヨークへ向かいましたがなかなか仕事を得られなかったフランクリンは今度はフィラデルフィアに向かう。
誠実で勤勉、情熱的、そして高い印刷技術をもったフランクリンは、フィラデルフィアで職を見つけ、ゆく先々で会った人と仲良くなり、多くの実力者に認められていく。

ここで学べることは誠実さと情熱は人を動かすことができ、そして勤勉は自らの道を切り拓くことができるということである。

フランクリン自身も勤勉の重要性については彼の自伝の中でも次のように強調している。
 
私がかように自分の勤勉ぶりを事こまかに、 また無遠慮に述べ立てるのは、自慢話をしているように聞こえようもしようが、 そうではなくて、私の子孫でこれを読む者に、 この物語全体を通して勤勉の徳がどのように私に幸いしたかを見て、 この徳の効用を悟ってもらいたいからである。

フィラデルフィアで働いた後、知事の勧めで2年ほどロンドンで働き、その後再び帰国し印刷業を再開する。
この時フランクリンは20歳だったが、この時期にフランクリンはある決意をする。
それはいかなるときにも過ちを犯さずに生活し、生まれながらの性癖や習慣や交友のために陥りがちな過ちは、すべて克服しようというものだった。つまり徹底した自己主管を決意するのである。

「自分は何が善で何が悪であるかは分かっていると思うからつねに善を為し、悪を避けることができないわけがあるまい」と考え、自らに守るべき13の徳と戒律を定めたのである。

以下がフランクリンの実行した13の徳だ。自ら考え、自らから実行したフランクリンは当時まだ20歳。


1節制 飽くほど食うなかれ。酔うまで飲むなかれ。

2沈黙 自他に益なきことを語るなかれ。駄弁を弄するなかれ。

3規律 物はすべて所を定めて置くべし。仕事はすべて時を定めてなすべし。

4決断 なすべきをなさんと決心すべし。決心したることは必ず実行すべし。

5節約 自他に益なきことに金銭を費やすなかれ。すなわち、浪費するなかれ。

6勤勉 時間を空費するなかれ。つねに何か益あることに従うべし。無用の行いはすべて断つべし。

7誠実 詐りを用いて人を害するなかれ。心事は無邪気に公正に保つべし。口に出だすこともまた然るべし。

8正義 他人の利益を傷つけ、あるいは与うべきを与えずして人に損害を及ぼすべからず。

9中庸 極端を避くべし。たとえ不法を受け、憤りに値すと思うとも、激怒を慎むべし。

10清潔 身体、衣服、住居に不潔を黙認すべからず。

11平静 小事、日常茶飯事、または避けがたき出来事に平静を失うなかれ。

12純潔 性交はもっぱら健康ないし子孫のためにのみ行い、これにふけりて頭脳を鈍らせ、身体を弱め、または自他の平安ないし信用を傷つけるがごときことあるべからず。

13謙譲 イエスおよびソクラテスに見習うべし。


ここで学べることは自己管理の重要性と実際に実行するということだ。

フランクリンもいきなりこれらをすぐに実行するのは難しいと考え、一週間に一つだけ、しかも一つのキーワードだけ心に留めておくという方法で続けた。

重要なことは頭で思っているだけでなく、実際に行動に起こすこと。それを続けること。
そして他人の目よりも自分自身の良心に従って生きること、自分の理想とする姿を目指していくことが大切ではないかとフランクリンの姿から思わされる。
毎日の習慣は知らず知らずのうちに自分の人格を創り上げていく。

さらにフランクリンは自分のことだけでなく、街のために図書館を設立したり学術協会を設立したりなど、公益のためにも尽力するパブリックマインド(公共心)のとても強い人だった。

怠惰な生活を嫌い、常に勤勉と節約を実行し、さらに公的意識を高く持ち人のため、社会のために生きてきたフランクリンの姿から、私たちが学べることは多くある。

自己啓発書の古典版ともいえる、大変重宝する一冊だ。