国際教育開発の必携書ー江原祐美 編 【開発と教育】

 

開発と教育―国際協力と子どもたちの未来

開発と教育―国際協力と子どもたちの未来

 

 著者は比較国際教育やラテンアメリカ地域を専門とし、帝京大学助教授をされている。この本は私が卒論でICT(情報通信技術)が開発途上国の公教育においてどのように活かされ、効果を出しうるかというテーマで執筆しているときに大変お世話になった思い入れのある一冊でもある。

第Ⅰ部では「国際教育開発」に限定されず、まずは国際開発という分野の発展の歴史、概念、そしてそれをとりまく各国際機関の活動の歩みを取り上げている。第Ⅰ部の1章では国際開発の歴史を大きく五期に分類し、各時代の特徴とそれに影響を受けてきた開発の歴史が述べられている。「教育」に関わらず、水問題でも貧困問題でもなんにせよ、国際開発の一分野として認められるものにおいては、まず何よりも国際開発という大きな枠組みを捉えることが重要である。国際開発は教育、食糧、ジェンダーなどの各分野がそれぞれ独立した問題を抱えているわけでなく、それぞれが複合的に絡み合って問題を生み出すことが多いことから、開発における全体像の理解はとても重要なのである。

第Ⅱ部に入ると本格的に「開発教育」に焦点を絞られ論が進められていく。

世界銀行などを中心とする国際機関がどのような理念とプロセスを経て今日までの国際教育開発に取り組んできたのか、という第Ⅰ部の内容にも被る歴史的側面から始まって、次に各地域においてどのような国際教育開発が行われてきたのか、その成果と現状を含んだ地域研究的な側面を学ぶことができる。

第Ⅲ部においては教育開発が抱える現状、問題、論点を中心にまとめられており、これまでの教育開発全体の成果と課題を挙げながら、今後の展望という形で締めくくられている。

以上見てきたように、決して気軽に読める内容ではなく、何度も読み返し流れをつかんでいくことにこの本の価値があるのではと思う。特に教育開発の問題を包括的に網羅している点で大変優れているし、よく研究がなされていると思う。またNGOや民間企業の活躍が目覚ましい昨今においても、開発の中心的役割を果たす国際機関について多く、多角的に触れている点で本書は国際機関の在り方や課題についてまで考える機会を与えてくれる。