効果的な人間関係を築くためにはー斉藤勇【心理分析ができる本】

「心理学」と一口にいっても実践心理学、知覚心理学社会心理学など、その研究範囲は多岐に渡る。

心理学は私たちの生活の身近なところでとても役に立つが、本書は私たちの実生活の中で役立つ心理学を紹介することで、心理学をとり身近に感じてもらおうという趣旨がある。
実生活の中で特に私たちの気持ちを揺さぶる恋愛、仕事、人間関係に焦点を絞りながら、分かりやすく人間の心理を解説している。

例えば、「生理的に受け付けない」という言葉がある。何か特別な理由があるわけではないのに、特定の人に嫌悪感を持ってしまう。しかしこれは原因が相手にあるように思えて実は、自分自身の中に類似したイヤな部分を認めたくない表れだという。

心理分析ができる本 (知的生きかた文庫)

心理分析ができる本 (知的生きかた文庫)

 

 また、「最初に会ったときはどんな時でもあまり明確に対立しない方が良い」というアドバイスも書かれている。私たちは対面する人の事前情報を収集し、出会う前から勝手な偏見を持ってしまうことも多い。しかしその事前情報だけで相手のイメージを決めつけてしまうと、相手を良く知らないままに事前情報から得られた相手像を作ってしまう。 たとえ相手が自分と反対の意見を持っている人物だと事前に分かっていても、会って話すまでは決めつけず、対立していた考えを持っているということすら忘れてしまった方が良いのかもしれない。


私にとって特に興味深かったのが、同性愛というアブノーマルな関係を生み出す原因を心理学的に分析している箇所である。心理学の分野で有名なフロイトのエディプスコンプレックスがここでは引用されており、フロイトによると男の子が幼児期に母親を手に入れようと思う心理が、いつの間にか母親=女性と認識し、母親と関係を持つことはタブーであるため、性的な関係を同性に求めてしまうようになる。だから幼少期に母親への強烈な想いを抱く男の子、反対に父親への依存的感情を抱く女の子は同性愛になりやすいという分析である。

昨今は渋谷区の同性婚を認めるニュースなどが世間を騒がせ、今一度同性愛について考える機会が増えているのではないかと思う。そうした時に、単に人権や差別という部分にだけ目を向けるのではなく、そもそもどうして同性愛者が出てくるのだろうと考えてみる必要がある。その分析に心理学が役に立つはずである。

心理学は歴史も深く、範囲も膨大であるため、真剣に学ぼうと思えばかなりの労力が費やされる。しかし人間の心理というのは私たちの生活のどこにでも現れるものであり、我々はあまりにも感情的な動物なのである。
だからこそ、心理学を学問として追及しなくても、本書のように実生活の中に現れる人の心理について書かれている書物を読むことで、心理学を気軽に楽しむことができるのではと思う。