彼らはなぜ国際協力を選んだのかー山本一巳・山形辰史 編【国際協力の現場から-開発にたずさわる若き専門家たち-】

 

国際協力の現場から―開発にたずさわる若き専門家たち (岩波ジュニア新書)

国際協力の現場から―開発にたずさわる若き専門家たち (岩波ジュニア新書)

 

 副題にもあるように、教育、貧困、農業、紛争問題など様々な分野で国際開発に携わる18人の専門家がそれぞれの分野から見える国際協力の姿が自身の体験談をもとに書かれている。

「はじめに」でも述べられているように、本書で紹介されている専門家たちは特定分野の熟練者ではなく、むしろまだまだ経験不足な若き専門家である。そういった若き専門家たちがどのような経緯で国際協力を志すようになったのか、また、国際開発に従事するようになって見えてきた世界はどういったものかを語る。

本書は各分野が抱えているイシューを紹介するのみならず、国際開発学の発展の歴史にも触れている。貧困や教育機会の問題は、常に「基本的人権」の問題として考えられていたわけでなく、時には政治的な意図の中で国際協力がおこなわれ、時には偏った価値観と一方的な援助によって失敗してきた国際協力の歴史もある。本書では各分野のイシューを読んでいくことでそういった国際協力の全体像を把握することもできるようになっている。

また、学問としての国際開発は非常に広範囲で、例えば農業問題や紛争、環境問題などの各分野を一人ですべて網羅することはできず、自ずとその中でも細分化された分野を専門とすることになる。しかしそれでいてもなお、国際開発の性質上、それぞれが断片的な問題ではなく、複合的に絡み合い、一方の問題解決が他方の問題を生み出すこともある。そういった意味においては自分の専門とする分野だけでなく、本書のように開発においてそれぞれの分野で抱えている諸問題を包括的に理解しておくことは有用である。

巻末にそれぞれの専門家たちの経歴が載っているので、こちらも自身のキャリアを考える上では参考になりそうである。