文字が読めないおばあちゃんがエンジニア!?インドのNGO「ベアフット・カレッジ」の取り組みが凄すぎる

インドにおける教育開発とジェンダー問題を研究する中で、文献を通して非常に興味深い取り組みを行っているNGOに出会ったので紹介します。

インドの女性を取り巻く過酷な環境

10億人を超える人口を抱え、さらに25歳以下の若い世代がその半数を占めるインドはIT技術の普及も相まって急速に発展している国の一つですが、その光の裏側には貧困の集中や女性蔑視の社会的構造が未だに根強く残っています。

インドはカースト制度という階級制度に基づいて人々の職業選択や結婚の相手が制限されてきた歴史がありますが、さらにそのカーストにも属さない「ダリット(不可触民)」と呼ばれる人々は差別と偏見の対象として今でも賃金、雇用、住居、教育などあらゆる面で不利な立場に苦しめられています。

また、徐々に改善されてきてはいますが、農村部においては男尊女卑が根強く残っており、結婚の際に花婿に多額の財産を贈る「ダウリー(持参金)制度」や「こども婚」などインドの女性を取り巻く過酷な環境が残存しています。

こうした風習や社会的な構造にはインド国民のおよそ8割が信仰しているヒンドゥー教による影響も大きく、ヒンドゥー教徒の行動規範書とも言える「マヌ法典」には女性について以下のように記されている一節があります。

幼き時は父に、嫁しては夫に、老いては息子に従うべし。げに女の自立はなしがたし。

つまり、女性は生涯男性に従属すべき存在であるということが書かれているわけです。
こうした社会の中では女性、特にダリットに属する女性の状況は一層深刻で、低賃金で過酷な労働に従事せざるを得なかったり家庭内で夫による暴力に苦しめられている現状があるわけです。
そんなインドが抱える社会課題を解決すべく、一人の男が立ち上がります。

 

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ベアフット・カレッジの創設者、バンカー・ロイ(Bunker Roy)

1945年にインドで生まれ、インドの名門デリー大学を卒業し、医者にも外交官にもなることができた彼が選んだのはラジャスタン州で井戸を掘る仕事。
そんなある時に彼は偶然ティロニアという小さな村を訪れます。

その村の貧しさに衝撃を受けたロイは村に残り、「村から都会への人の流出をどう防ぐか」「村にどのように雇用を生み出すか」を考え、ベアフット・カレッジ(裸足の大学)を建設するに至ります。

Barefoot College

ベアフットカレッジの斬新な取り組みは、農村に住む文字の読み書きができないおばあちゃんたちを訓練し、最新の技術を教えることでおばあちゃんたちをエンジニア、建築技師や設計者などに育て上げるというところにあります。
特に太陽光発電の教育に力を入れており、灯りのない村に太陽光発電所を建設することで持続可能な開発に繋がります。それまで文字の読み書きができなかった村のおばあちゃんたちがまさに、この太陽光発電を建設するエンジニアになるのです。
おばあちゃんたちはカレッジで6か月間、最新の技術を教え込まれます。ロイは文字が読み書きできる人よりも文盲であるおばあちゃんたちの方が物忘れがなく、得た知識をしっかりと覚えているのだと言います。

こうして確かな技術と知識を得たおばあちゃんたちが今度は村に帰り、ソーラー発電所を建設したり、他にも村に必要とされる様々なインフラ事業を積極的に推進していきます。
こうした取り組みの中で、これまで差別の対象とされてきた女性が、村で圧倒的な存在感とリーダーシップを発揮し、女性のエンパワーメントを向上させ、ソーシャルイノベーションを起こしていくようになります。

さらに詳しい内容は下記のサイトとロイが直接プレゼンしたTED映像に譲りますが、ベアフットカレッジの取り組みは「開発とは何か?」「持続可能な開発とは?」という問いを投げかけ、世界銀行や各国際機関・政府機関によるトップダウンの援助ではなく、今ある限られたリソースの中でどのように開発を進めていくか、現地の人々をどのように開発していくか、といった視点が大切であることを教えてくれています。

 

来春インドに行くので、ベアフットカレッジもぜひ視察できたらと思います。

 

最貧国の闇を照らす、女性のための「ベアフット・カレッジ」

追記:ベアフットカレッジ訪問してきました。

インド西部にある農村地域で活動しているベアフットカレッジを実際に訪問し、

体験ツアーに参加してきました。

NGOベアフット・カレッジ(Barefoot College) 訪問記 - せかろぐ-世界の学びログ