途上国で仕事をする上での倫理について

以前書いた国連機関で働きたい人が海外の大学院で学ぶべき理由 という記事の中で、国連職員を志す人にとっては海外の大学院で学ぶことが採用においても仕事上のパフォーマンスにおいてもアドバンテージになり得るということを書きました。今回はテクニカルな部分ではなく、途上国で仕事をする上での道徳観や倫理観をPKO部隊の事例から考えてみたいと思います。

国連職員の不祥事

日本時間の2月1日午前10時頃、毎日新聞から「中央アフリカPKO 性的不祥事、派遣国を公表…国連」というニュースが配信されました。PKO(United Nations Peacekeeping Operations)は日本では国際連合平和維持活動と訳されていますが、紛争における平和的解決を目的とし、そのために各国軍部隊(国際連合平和維持軍=United Nations Peacekeeping Force)を必要地域に派遣しています。

派遣先となる国は現在紛争中の国家のみならず、平和と安全を脅かす危険性がある地域や災害などにおける非常事態の場合においても派遣されます。

そんな国連平和維持軍ですが、派遣先でのトラブル、不祥事は度々報告されて問題となっています。今回の記事はこうした国連平和維持軍の不祥事が”また”報告されたというものです。毎日新聞から記事を抜粋しました。

ニューヨーク草野和彦】国連は1月29日、中央アフリカの国連平和維持活動(PKO)部隊による未成年者への性的不祥事が新たに6件発覚し、バングラデシュ、コンゴ民主共和国、モロッコ、ニジェール、セネガルから派遣された要員が関わっていたことを明らかにした。
<国連>PKO要員また少女暴行の疑い  中央アフリカではPKO要員による現地住民への性的不祥事が相次いでいるが、問題を起こした要員の派遣国が公表されたのは初めて。

国連は5カ国のうちコンゴ民主共和国について、派遣前の教育が不十分として、全要員を送り返すことを決定している。  
今回のケースを含め、2015年に中央アフリカで起きた性的不祥事は22件に上る。
世界各地で展開中の16のPKO全体では、計69件(前年比18件増)が確認されている。
潘基文(バン・キムン)事務総長は近く、要員の派遣国名を含む報告書を発表する。
派遣国名の公表や要員の送還は、事務総長が昨年9月に発表した再発防止策の一環。
29日に記者会見した国連のバンバリー事務次長補は「被害者支援、責任の追及、再発防止に全力を挙げている」と述べた。  

一方、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は29日、中央アフリカで14年に7〜16歳の少女や少年計6人がフランス軍や欧州連合(EU)部隊の性的虐待などに遭っていたことを明らかにした。7歳の少女は水やクッキーと引き換えに、フランスの要員が求める性行為に応じていたという。

 中央アフリカPKO:性的不祥事、派遣国を公表…国連 - 毎日新聞

PKO部隊は基本的に各国の軍部隊が結集した部隊なので、PKOに派遣される人材の選定は各国によって異ります。日本においては自衛隊の中から志願制で厳しい選抜によって選ばれたメンバーがPKO部隊として派遣されます。おそらく他の国でも、基本的には志願制による選抜方式なのではと予想されます。ということは、強弱はあれど多くのPKO部隊のメンバーは少なからず「世界の平和」や「国際貢献」といった動機を持ってPKO部隊に入ったのではないでしょうか。

途上国で働く国連職員やNGO職員の倫理観

ここで「PKO部隊は軍隊だから軍隊特有のフラストレーションがあり、自分とは関係ない」と考えるのではなく、途上国で働く国連職員やNGO職員の倫理的な問題について改めて考えてみる必要があるのかもしれません。

人間は警察であろうと教師であろうと何だろうと、その職業いかんに関わらず間違いを犯す可能性を誰でも持っています。しかしながら途上国で働く人たちは、さらにこうしたリスクを高める環境にいるとも考えることができます。

途上国で働く人達にとって、職務上における犯罪リスクを高める一つの原因として生活環境の変化や生活水準の低下が考えられます。UN職員やNGO職員など、職場における待遇は良いものであっても、自国と比べると生活水準が著しく下がったり、また頻繁な生活環境の変化におけるフラストレーションは心身ともに影響を受けるのではないでしょうか。

もう一つは「支援している側」と「支援される側」という意識が現地の人々との関係を歪めるものになっているのではないかと考えられます。毎日新聞の記事の中では7歳の少女が水とクッキーによってフランスの要員から性行為を受けたとされています。果たしてこのフランス要員は自国においても7歳の子供に水とクッキーでこうした行為を要求するのでしょうか。こうしたPKO部隊の相次ぐ不祥事は、派遣先の国に対して「途上国の子供」「支援してあげている国」という認識の中で無意識のうちに暴力的な優越意識が芽生える可能性があるという教訓のようにも感じられます。

国際協力の仕事を行う人が持つべきマインドセット

国連で働きたい、途上国のために何か仕事をしたい人にとって一番大切なことは英語やリーダーシップなどではなく、「国際開発」「国際協力」に携わろうとする強い動機と倫理観、そしてリスク回避能力なのかもしれません。

途上国では日本ほど法整備がなされていない場所が沢山あります。そうした環境の中では個々の倫理観や道徳観が現地での行動を規定すると言えるかもしれません。
人間は弱い生き物です。誰でも間違いを犯す可能性を持っています。大切なのはその自覚と、どのようにそのリスクを低め、リスクを回避できるかを考えることではないでしょうか。自戒を込めて。