明治を作った密航者たちの熱き留学への道

日本からイギリスに着くまでの十数時間のフライトの中で、一冊の本を読みました。

【明治を作った密航者たち 熊田忠雄著】

明治を作った密航者たち (祥伝社新書)

明治を作った密航者たち (祥伝社新書)

 

国禁を犯して留学した明治の志士たち

以前、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)に留学した井上馨や伊藤博文らをはじめとする長州ファイブや薩摩スチューデントについての記事を書きました。明治時代を支えた幕末の志士たちが学んだ軌跡として、UCLの中庭には彼らの名前が刻まれた記念碑が建てられていると紹介しました。

幕末の志士たちが留学した当時、日本は江戸幕府による鎖国体制で、交易の相手国をオランダと中国の二カ国に限定し、幕府の管理する長崎・出島でのみ取引が許されていました。つまりアメリカやイギリスなどへの留学には国禁を犯して行かざるを得ませんでした。

イギリス留学を果たした長州ファイブや薩摩スチューデントを始め、アメリカやドイツなどへ国禁を犯して海を渡った侍たちが、万が一見つかれば「死刑に処す」という定めにも関わらず、なぜ彼らは海を渡ることを選んだのか。気の遠くなるような航海の中で彼らが持ち続けていた志とは何か。

それは本書のあとがきにも書かれているように、鉄道の父とも呼ばれた井上勝の次の言葉に要約されています。

「【空しく隔靴搔痒の嘆を抱く秋にあらず、寧ろ一躍外国に渡り、其物情を視察し、其技術を実習し、以て速に国家の急に応ず可き】

国内にいて悶々鬱々としながら空しく日々を送るより、いっそ国禁を冒してでも外国へ行って見聞を広め、進んだ知識や技術を習得して帰国後、それを国のために役立てようと考えたのである。」(「明治を作った密航者たち」より)

志を高く持って留学しよう

イギリスではそろそろ留学生の入れ替わりの時期。これから日本から海を渡ってイギリスで学ぼうとする留学生の中には不安を抱えている人もいるかもしれません。

昨今、若者の内向き志向と言われていますが、海外で学ぶ日本人が圧倒的に少数派だった鎖国時代の幕末とは違い、現在において留学ははるかに身近なものになっているのではないでしょうか。海外で新しい知識と技術を習得した留学生が帰国後に国の要職に就いていた幕末とは異なり、現在は留学しても就職が保証される時代ではないかもしれません。しかしこんな時代だからこそ、「なんのために留学するのか」「留学で得た学びを社会でどのように活かすのか」という問いに対して自問自答する姿勢、つまり志の部分を大切にしたいものです。