垂直型の仕組みから水平協働型へー松島聡【UXの時代 ― IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか】

UXの時代――IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか

UXの時代――IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか

 

新産業革命、資本主義の次の世界

本書はUX(ユーザーエクスペリエンス)時代の到来が新たな産業革命となり、資本主義の次の世界となるだろうと示唆している。

筆者によると新しい産業革命で実現するのは、

企業や業界の枠を超えて、あらゆる人がネットワークでつながり、経済の担い手になる社会だ。

アメリカ企業であるウーバー・テクノロジーズが運営する自動車配車サービスや、宿泊施設・民宿を貸し出す人向けのサービスであるAirBandBの事例を参考に、モノを所有するのではなく共有するシェアリングのビジネスモデルが新たな産業創出の機会を提供すると語る。ウーバーのようなビジネスでは見知らぬ人の車に乗ることに抵抗を感じるということがあっても、ユーザによるドライバーの評価はそのままドライバーの次の仕事につながるためドライバーもユーザの満足度を高めるために善良なサービスを提供するようになる。つまりシェアリングビジネスで求められることは、お互いが信頼し合える仕組みである。

なぜ日本はイノベーションを起こせないのか

筆者は日本が米国のような産業構造や消費活動そのものを変えてしまうビジネスが生まれない原因に、既存の企業や行政による垂直統合型の仕組みについて指摘している。イノベーティブな米国企業はビジネスの仕組みを効率化する部分と他者に負けない強みとなる事業分野の両方を持ち、前者はアウトソーシングなどで外注するかパッケージ製品でリーズナブルに賄う一方で、後者の事業に関しては高い技術を持った技術者を雇用して自社でシステム開発を行う。反対に日本はビジネスの仕組みを効率化する部分に極端な偏りが見られると指摘している。また日本の労働システムは社員の能力を職能ではなく職位で測ろうとし、それが非稼働・無駄を生む働き方につながってイノベーションを起こせないと述べている。
通信技術の発展によって様々な業界や企業のネットワークがつながる現代においては、こうした従来の垂直型の仕組みから脱却し、国民・地域住民による水平協働型へ移行していく必要があると訴えている。

最新テクノロジーを使ったビジネスの事例を学べる

読感としては様々なシェアリングビジネスの事例が紹介されており非常に興味深く読むことができた。こうしたビジネスモデルが新たな産業として広まっていくという筆者の主張には説得力もある。しかしながら本の構成としては冗長な説明が多く、半分ぐらいの内容でもよかったのではないかと思う。また、シェアリングビジネスにおけるリスクについての分析や説明も不十分であるように思える。IoTやAIなど最新のテクノロジーを使ったビジネスにどのような事例があるのかについて知るには良い本だと思う。