結局はまず自分が変わらねばならぬー金森 重樹 、冨永 星 【自分の小さな「箱」から脱出する方法】

結局、人間関係

世の中、結局は人間関係だ。

誰しも一度はそんなことを実感したことがあるのではないだろうか。

例えば職場環境に目を向けると、リクナビNEXTの調査によると、退職理由のホンネランキングでは以下の結果が出ている。

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引用:http://next.rikunabi.com/01/honne2007/honne2007_01.html

中身を見てみると人間関係に係る割合は全体の43%と半分近くを占める。同率7位の社風や経営方針というのも細かく突き詰めてみれば人間関係に係る割合はもう少し高くなるだろう。

誰もが私たちの人生における悩みの種や喜びの源には人間関係が相関していることに概ね同意するのではないだろうか。しかし人間関係が良くなることも悪くなることも、結局は自分次第であると考えられている人はどれだけいるのだろうか。私たちはついつい「あの人がもう少しこうしてくれればいいのに・・」「あの人が変わってくれれば良くなるのに・・」といった思いを抱いてしまう。心のどこかでは自分に原因があるかもしれないとうすうす感じつつも、いざとなると原因を自分以外のところに求めてしまう。

それは結局、自分の「箱」の中に閉じこもっている状態なのだ。

自分の小さな「箱」から脱出する方法

自分の小さな「箱」から脱出する方法

  • 作者: アービンジャーインスティチュート,金森重樹,冨永星
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2006/10/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 本書は人間関係が上手くいかない根本原因とその解消法をストーリ仕立てで興味深く解説している。割とエグゼクティブ向けの内容ではあるものの、人間関係に悩む人々に対して広く受け入れられる内容だ。

箱とは何を意味しているのか

人間関係が上手くいかない原因は、自分の箱に入ってしまっているからだ。本書は一貫してこの原則を主張している。では、そもそも本書で言う箱とは何なのだろうか。

本書では「箱」を、自分を自己弁護すること、自己擁護すること、自己正当化することの象徴として表現されている。例えば「私は間違っていない」と感じた時には、すでに箱に入っている状態と言えるの。こうした箱の中に入っている状態では、自分が正しく、他者が間違っているように見える。自分が正しいと思い込んでいるうちは、現実を正しく見つめることができなくなり、他者をありのままの人間として見ることができなくなってしまう。

原因は自分だった。

本書の中では箱に入っている人の例をいくつも挙げているが、その中でも象徴的なのはイグナス・ゼンメルヴァイスという医者の事例だろう。

彼は1800年代にウィーンの病院で働いていた。奇妙なことに、彼の病棟だけは他の病棟に比べて患者の死亡率が異常に高かったのである。他の病棟では死亡率が2%なのに対し、ゼンメルヴァイスのいた病棟ではなんと10%という死亡率の高さだった。ゼンメルヴァイスはなぜ彼の病棟だけ死亡率が高いのか原因を探ろうとした。また、考えられることはすべて行った。しかし、それでもその原因は分からなかった。

ところがゼンメルヴァイスが一時ほかの病院へ出張になり、しばらくその病棟を離れた時、病棟の死亡率は他の病棟と同水準の2%に下がったのである。この事実にゼンメルヴァイスは大変ショックを受けたが、どうやら自分が死亡率を高めている原因であるらしいと考えるようになった。

ゼンメルヴァイスは自分がいなかった時の違いについて考えてみた。すると、一つの違いが見えてきた。それは死人の解剖と研究の長さの違いだった。ゼンメルヴァイスは他の医師と比べ、死体に触れている時間が長く、また、死体に触れた後も手を洗わずに患者に触れることがあったことに気付いたのである。ゼンメルヴァイスは死体から何か見えない物質が移っているのではないかと仮説を立て、死体に触れた後はよくよく手を洗うようにした。その結果、病棟の死亡率は1%を切るまでに下がったのだ。

これはまだ「細菌」というものが発見される前のことで、彼が行ったことは結果的に感染症を予防することだったのだ。患者を治そうとしている医師が、まさか自分が原因で患者を殺していたという事実は考えさせられるものがある。私たちは一見、自分が正しいと思って行っていることでも、実はそれが原因で周囲へ悪影響を及ぼしている可能性があるということを思わされる事例である。

箱からでるには

では、いったいどうしたら「箱」から脱出できるのだろうか。

まずは自分が箱の中にいるということを知ることが最も大切なことである。

次に、なぜ箱に入ってしまうかを知ることである。本書によれば、箱に入ってしまう一番の原因は、自分の気持ちにウソをつくことだという。自分の良心に背き、すべきでないことをし、すべきことをしなかった時に人は箱に入るようになる。

箱に入っている自分を客観的に見ることができ、かつなぜ箱に入ってしまうのかを理解できれば、そこから抜け出すことは難しいことではない。

自分に正直になり、他者を人として見ることで、箱から抜け出すことができる

他者を人として見るということは、他者を自分の都合のいいように見ないということである。例えば、相手が箱から出ればいいのに、と原因を相手のせいにしている時点で自分が箱に入ってしまっている。原因を相手に押し付けず、相手を一人の人間としてしっかり見ること、それが箱から抜け出せる方法なのである。

結局はまず自分が変わらなければならないのだ。