ICT×途上国が熱い!ICT×途上国の事例と今後の可能性

先日、DMM.Africaとタイガーモブ主催の「ICT×途上国で働く」というイベントに参加してきました。 

海外インターンシップならタイガーモブ(タイモブ/Tiger Mov)

「ICTを使って途上国の課題を解決する」「ICTを使って途上国でビジネスをする」、そんな熱い気持ちを抱いた人たちが集まる素敵なイベントでした。

「ICT×途上国で働く」をテーマにイベントを開催します! | ICT for Development.JP

イベントは講演者の方から「ICT x 途上国の可能性」というテーマでお話があり、

次に3人のパネリストによるパネルディスカッションが行われました。

ICT x 途上国の可能性

最初の公演では「ICT x 途上国の可能性」というテーマで実際に途上国の課題をICTで解決しているいくつかの事例が紹介されました。

M-PESA ケニア 

ICT×途上国の事例でM-PESAは有名ですね。M-PESAは、携帯電話でお金の送金から出金・支払ができるモバイルマネーサービスです。PESAはスワヒリ語でお金を意味します。途上国ではネットがまだまだ普及していないところが多いですが、M-PESAは通常の電波を使うという特徴があるため、ネット環境のない場所でも利用可能です。つまりガラケーでも利用できるということです。

その仕組みのポイントはSIMカードにあります。携帯電話のSIMカードにアカウント情報が集約されているため、SIMカードさえ持っていればどの携帯電話端末からでも自分のアカウントとして利用できるようになります。また、ケニアではSIMカードの購入は18歳になると配られる国民IDを利用して購入できるようになります。国民IDとSIMカードが紐づくので、携帯電話さえあればそれが身分証明にさえなってしまうというわけです。このM-PESAによって、ケニアの送金コストはなんと90%も削減したそうです。

LINE Payのモデルがケニアに!?ケニア人の生活を支えるモバイル送金サービス『M-PESA(エムペサ)』が面白い!

M-Agriculture ガーナ

農民は自分で育てた農作物を市場で直接売ることが困難なため、一般的に仲買人(ブローカー)を通じて農作物を市場に出します。しかし農民は農作物が市場で一体いくらぐらいで取引されているのか知りません。だから仲買人の言い値で売ってしまうことが多く、結局仲買人によって搾取されてしまうという課題があります。この課題を解決するのがM-Agricultureです。

農民から農作物を買い付ける仲買人(Agent)に対して、プロジェクトから情報配信用のアプリが入ったデバイス(スマホ、タブレット)を提供し、仲買人が農民に対して情報をセレクトして配信する仕組み。

仲買人は最初に各農民と面談し、農民の情報(氏名や性別等の基本情報、育てている作物、農業スキル、欲しい情報、等)を聞き取りシステムに登録する。

仲買人は定期的に各農家を訪問しアドバイスを提供することが義務付けられ、訪問時には写真を取ったりメモを取ったりして、その情報はデバイスを通じて、サーバーにアップされる。

各シーズンにいつ頃、誰を訪問するべきか?というタイミング(種まきの前とか、収穫の前とか)はアプリで知ることが出来る。

アプリには、登録された農民情報から農民をグルーピングして「米を作ってる農家」、「メイズを作ってる農家」、のように作物で分類したり、「経験抱負な農家」、「経験が浅い農家」のようにスキルで分類したりする機能があり、仲買人は配信される情報の内容を見て、それが必要なグループに配信する。

沢山の情報を一斉に全員に配信するのではなく、各農家に合った情報を提供する。

アプリの言語は英語のみだが、農民の中には英語が出来ない人もいる。

その場合は、仲買人は定期訪問時に現地語でアドバイスしたり、ポータブルのプロジェクターで動画を見せて説明したりする。

m-Agriculture成功の鍵は、どれだけ人が介在出来るか? | ICT for Development.JP

M-Health

ICTは医療の分野でも注目されています。モバイルアプリで症状を分析し分析結果を診断できるM-Healthです。例えば低所得国家では病院へのアクセスが悪く、通院が容易ではない妊産婦の方がいます。彼女たちは病院へのアクセスが悪いことから劣悪な環境で子供を産まなければならず、出産の際に感染症になったり最悪の場合、死に至ってしまう課題があります。Mobile Alliance for Maternal Action(MAMA)はこうした妊産婦を対象にしたM-Healthサービスを展開しています。携帯電話のメッセージ機能で、妊娠時に注意すべきことや症状が現れた時の対処法などを携帯電話メッセージを通じて提供してくれるのです。

また、それ以外のM-Healthでも、症状をお医者さんへ伝えることでがん検診ができるものもあります。医療はすべての人にとって重要な分野ですので、今後ますますICT×医療は注目されていくでしょう。特に途上国のニーズによって生まれたサービスが日本でも利用される、いわゆるリバースイノベーションも期待されています。

臨床現場のあり方変える「モバイルヘルス」(page 3):医療:日経デジタルヘルス

I-COW ケニア

ICT×家畜(なんかこの言い回し面白い)分野も注目されています。I-COWは牛の状態を登録すると、様々な人から飼育のアドバイスがもらえる家畜の飼育、生産サービスです。こちらはケニアで開始され、農家の生産高向上を目的にGreen Dreams TECH Ltdにより開発されたサービスです。

iCowでは、ショートメッセージ(SMS)で農業や家畜の飼育に関する情報(Tips)を受信でき、鶏、ヤギ、ヒツジなどの売買情報も携帯電話で提供している。

また、家畜の売買に関する情報や飼育方法についても携帯電話で相談が可能であるほか、顧客の家畜の情報が蓄積されているため、どの農家のどの家畜がわかるので適切なアドバイスが可能である。

iCow によると、2011年6月の開始時期からを利用しているケニアのある農家の牛が以前は15リットルのミルクしか出していなかったが、iCowを利用するようになってから31リットルのミルクを出すようになったとのことである。総務省|平成26年版 情報通信白書|iCow

 OLPC (100$PC) ルワンダ

OLPCというのは結構有名なので知っている人も多いかもしれません。OLPCとはマサチューセッツ工科大学のニコラス・ネグロポンテを中心とするNPOのことで、OLPC(One Laptop Per Child)、つまり子供一人に1つのPCを届ける活動を行っています。One Laptop per Child

OLPCで配られるPCは「XO」と呼ばれるハードウェアのラップトップと、「Sugar」と呼ばれるソフトウェアで構成されています。XOは高い耐環境性と低消費電力が特徴で、100$ぐらいで購入できるため俗に「100ドルパソコン」と言われています。「XO」で利用できる機能は主に次の5つ。

・Squek eToys(描いた絵を自由に動かせる、スクリプト言語をもったお絵かきツール)
・Browse(フラッシュも使える本格的なブラウザ)※ただし訪問した学校にインターネットは通っていない
・Write(ワープロソフト)
・Record(動画、静止画、音を記録できるカメラ)
・Paint(ペイントソフト)

引用:ルワンダの子どもたちにPCを!One Laptop Per Child(OLPC)の現状と課題 | Rwanda note

この100ドルPCがアフリカのルワンダでかなり普及しているようです。

OLPCの報告書によると、2007年頃からルワンダで活動を始め、2011年時点では11万台以上が配布されたといわれています。

http://wiki.laptop.org/images/5/53/Rwanda_Report-v7.pdf

ルアンダの紙幣500ルワンダ・フラン札(約60円)にも子どもの一緒にXOと思われるPCが写っており、国の政策的にもITへの期待感を表していると言えそうです。

ルワンダの子どもたちにPCを!One Laptop Per Child(OLPC)の現状と課題 | Rwanda note

Solar Powered Internet School (SPIS) サムスン電子

韓国企業もICT4Dへの取り組みを行っています。

Solar Powered Internet School (SPIS)はサムスン電子が運営する、太陽光発電で稼働するITスクールです。これは世界初。現在はケニアやウガンダなどで開校されています。

Samsung Solar Powered Internet School (SPIS) | Center for Education Innovations

SPISは、長さ約10メートルほどの輸送コンテナを学校に改造し、サムスン製品のコンピュータやプリンター電子黒板、ネット、そして太陽光パネルを設置しています。総コストは約15万ドル(約1500万円)大企業が僻地で教育開発ーーサムスン電子、太陽光発電で稼働するITスクールをケニアで開校 | トジョウエンジン

自社製品をアピールしながらも社会貢献活動を行う、まさに企業によるSDGsへの取り組みの良い事例だと思います。

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Image from: Solar-Powered Internet School to be Showcased at 5th Innovation Africa Summit - ArtMatters.Info

日本の事例も!WASSHA タンザニア

WASSHAという日本企業もICT4Dに取り組んでいる注目の企業です。アフリカにはキオスクと呼ばれる日本のコンビニのようなお店が至る所にありますが、WASSHAはキオスクにスマホやPCの充電用の太陽光パネル貸し出すビジネスを展開しています。面白いのは、電気の"量り売り"という新しいビジネスモデルです。まずはキオスクに取り付けたソーラーパネルで発電し、電気を充電します。次に、キオスクのオーナーがスマートフォンの電子マネーを使って、電気をプリペイドで購入します。そして、その購入した電気を、キオスクにやってくる顧客に“量り売り”するというビジネスモデルです。携帯電話の普及率が80%を超えるタンザニアでWASSHAは拡大しています。WASSHAは造語で、スワヒリ語で「火をつける」という意味のWashaからとったそうです。

東日本大震災の時にも活躍した"Ushahidi"

途上国で起きたイノベーションが先進国でももたらされることをリバースイノベーションと呼んだりもしますが、紹介する最後の事例は日本の関東大震災でも利用されたリバースイノベーションの事例です。

ウシャヒディ(Ushahidi)はケニアで始まった非営利のソフトウェア開発組織です。

Ushahidi

情報収集、可視化を行う地図アプリケーションの開発を行っており、世界中の危機・災害時に不可欠な位置関連情報集約サイトを運営しています。地図データだけでなく震災に関連する情報や救援依頼など、一般人が情報発信できる情報プラットフォームを作っています。

日本でもこの技術を使って、東日本大震災の時に被災・支援情報を集約するオープンな復興支援プラットフォームsinsai.infoというサイトが立ち上げられました。「#tohokueq」「#miyagi」などのハッシュタグがつけられたTwitterの投稿をもとに地震に関する情報を集め、地図上でそれらの情報を反映させることで、市民に震災に関する情報をいち早く届けることを可能にしました。

ウシャヒディはもともと、ケニアで選挙の不正を監視するために開発されたシステムでしたが、その技術が東日本大震災に応用され、"Ushahidiの最大級の事例"となりました。まさにリバースイノベーションです。


その他にも、エチオピアの遠隔教育、ソマリアの電子マネーの普及率70%など胸熱なストーリーが聞けて楽しかったです。

ICT4Dの可能性と課題

ICT4Dの可能性と課題について、パネリストの方々はそれぞれ以下のように語られていました。

可能性

・リバースイノベーションが期待できる

・途上国でITエンジニアのレベルが向上し、イノベーションが起きる

・途上国での人材の流動性が向上し雇用促進につながる

 →英語xITで世界どこでも仕事ができる

・最新の技術に触れられる

課題

・人材育成

 →学校システムが機能していない
 →スキルを身に着けさせることの難しさ(フランス語圏ではそもそもIT単語が異なる)

・ICT分野のオーナーシップが弱い

 →特にユーザ側のオーナーシップ

・システムの中にアナログが混在している
 →例えばケニアのM-PESAでは決済まではITで行うが、レシートは手書きで時間が掛かるなど

 ・政府のオーナーシップの欠如
 →政府の事情でITを導入しない(ICTを導入すると売上データなどがより正確になるため不正・汚職が明らかになってしまう)

課題を克服し、可能性に期待し、ワクワクしながら仕事したい

私もIT業界にいたので感じることですが、ODA業界にいると最先端のIT技術にキャッチアップすることは難しくなります。ITに詳しい国際開発業界の人よりも、国際開発に詳しいIT業界の人材ニーズの方が、今後ますます拡大していくような印象を受けました。

これからの未来を考えると、ICTを抜きにした途上国開発というのはあり得ないぐらい、途上国では益々ICTの重要性が高まってくるでしょう。第一線で働く技術者ではないとしても、様々な事例やデータに触れながら、ICTx途上国の可能性を私自身も模索していきたいと思います。

パネリストが語られた課題だけでなく、ICTx途上国分野には様々な課題がありますが、課題を克服すること、そしてその先にあるイノベーションの可能性に期待を抱き、ワクワクした気持ちでODAの仕事に取り組んでいきたいと思います。