隣の席の人と友人になる
あなたは、新幹線や飛行機などに乗るとき、隣に座っている人と親しくなり、そのまま友人関係に発展したことはあるだろうか?恐らく多くの人は、機内や車内では人様に迷惑をかけたくない/かけられたくない思いが先行し、なるべく関わりを避けようとする傾向にあるのではないだろうか。筆者はそんな常識人の考えを覆す。
新幹線で隣に座る人と必ず友達になるという筆者。しかもそのやり方は「隣の人の足を踏む」こと。わざと足を踏み、その謝罪として準備しておいたハンカチで靴を拭く。そうるすことで話すきっかけを自ら作り出してしまうのだ。また、いくら話すきっかけができたとはいえ、普通なら初対面の人とも話がなかなか続かないもの。それに対して筆者は、まずはイエス/ノーで答えられる質問をいくつか投げかけ、そこから会話を発展させるのだという。
恩師との出会いは人の人生を変える
本書を読むと、中村氏がこうした人との縁を大切にしている根源に、恩師との出会いがある。上京したての19歳のころ、焼き鳥屋の隣の席に座っていた田端俊久という男に出会い、彼からこんな言葉を言われる。
「金儲けなんてものは、人生の目的ではないぞ。金のために働く人生なんて、つまらないものだ。人生の目的というのは、これから長い長い人生を送って、臨終を迎えるとき、どんな人間になっていたいかだ」
田端氏の人間的な魅力に魅かれ、中村氏は彼の下で行商の仕事を始めるようになる。職場環境は肉体的にも辛いものがあったが、この時期に中村氏は田端氏から人生における様々な指導を受けるようになり、のちに有限会社クロフネカンパニーを設立するに至る。現在は有限会社クロフネカンパニーを運営しながら新人研修やブライダル事業、講演会など様々な活動をされている。
本書を通して学んだ2つのこと
1つは、人と人との関わりは物語を生むということ。目の前の人と真摯に向き合い、相手を喜ばせようとする中で、わらしべ長者のように人から人へと繋がりが広がっていく。また、こうした人との繋がりが1つの物語を生み出し、1人ではできない大きなことも成せるようになる。
2つには、若いうちに人生の師匠に出会うことの大切さである。筆者もそうであるように、若くて社会のことも何も知らない多感な時期に、どのような大人に出会い、何を学ぶかでその後の生き方に大きく影響を与えることを、本書を通して再確認させられた。
家庭、学校、職場などどこでも構わないが、「人生」について教えてくれる師匠に出会うことは非常に重要である。その出会い自体が、運と縁なのかもしれないが、素晴らしい出会いの可能性は、案外どこにでも転がっているのかもしれない。だからこそ、情報に触れ、また外へ出かけることで様々な出会いの機会を得ることも重要なのだろう。
結局は人間関係なのだということを、再認識させられる1冊だ。