以前の記事では通勤時間の長さが人々の幸福度に影響を与えるという記事を書きました。
それでは世界基準で見たときに、そもそも日本ってどれぐらい幸福な国なのでしょうか?個人的には学力水準や経済的には非常に恵まれている国なので、『賭博黙示録カイジ』に出てくる言葉を借りれば、『日本人に生まれただけで、サイコロの目で6を出したようなもの』だと思っています。しかし、「幸福度」という観点で見た時には、また違った結果が見えてくるようです。
そもそも幸福度って何なのでしょうか?最近経済成長率だけでなく、この幸福度という概念が注目されていますが、一体どのような指数で幸福度は図られているのでしょうか?
1. 世界幸福度ランキングで日本は51位
国連と米コロンビア大学が設立した「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」と同大学地球研究所にて155か国を対象に行われた世界の幸福度調査において、日本は51位という結果でした。気になる第1位は、ノルウェーです。大まかなランキングの結果は下記の通りになっています。
1 |
ノルウェー | 14 | 米国 |
2 | デンマーク | 16 | ドイツ |
3 |
アイスランド | 19 | 英国 |
4 | スイス | 26 | シンガポール |
5 |
フィンランド | 31 | フランス |
6 | オランダ | 32 | タイ |
7 |
カナダ | 33 | 台湾 |
8 | ニュージーランド | 51 | 日本 |
9 |
オーストラリア | 56 | 韓国 |
10 | スウェーデン | 最下位 | サハラ以南諸国、シリア、イエメン |
「世界幸福度ランキング」、日本は51位だった | ロイター | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
※ランキングは2012年に開始され、今年で5回目となる。155カ国を対象に、1人当たりの国内総生産(GDP)や健康寿命、困難時に信頼できる人がいるかどうか、政府や企業における汚職からの自由度などを手掛かりに幸福度を調査。
2. 生活満足度ランキングでは異なる顔ぶれが
幸福満足度とは似て非なる概念の一つに、生活満足度というものがあります。
調査は145カ国・地域で15歳以上の計14万6000人超を対象に2014年に実施され、ダン・ウィターズ氏が指標をまとめました。回答者の目的意識、身体的健康、経済的な満足度などを調べ、「Global Well-Being Index」を発表しました。
Gallup-Sharecare Well-Being Index
2014年の生活満足度ランキングでは、パナマが首位となるなど、幸福度ランキングとは異なる国が上位にランキングされています。全体的に中南米が上位を占めています。
1 |
パナマ | 23 | 米国 |
2 | コスタリカ | 28 | ドイツ |
3 |
プエルトリコ | 44 | 英国 |
4 | スイス | 48 | フランス |
5 |
ベリーズ | 50 | タイ |
6 | チリ | 59 | 台湾 |
7 |
デンマーク | 92 | 日本 |
8 | グアテマラ | 117 | 韓国 |
9 |
オーストリア | 144 | ブータン |
10 | メキシコ | 145 最下位 | アフガニスタン |
3. 生活に満足している人は必ずしも幸福ではない
ランキングから言えることは生活満足度が高いからと言って必ずしも幸福ではないということです。このように豊かな生活が必ずしも幸福度に一致しないことを「幸福のパラドクス」または「イースタリン・パラドクス」といいます。この生活満足度と幸福度の差異については、成蹊大学文学部の小林教授が興味深い論文を書いています。小林盾、カローラ・ホメリヒ(2014)『生活に満足している人は幸福か─ SSP-W2013-2nd 調査データの分析─』
論文は2013年に国内における意識調査を行い、生活満足度が主観的幸福感と一致するのかを検討することを目的としています。結果として、
満足と幸福が一致しない人は、全体で 23.4%おり、女性ほど、年配者ほど、既婚者ほど、世帯収入が多いほど、「不満だが幸福」というポジティブな不一致が有意に増え、「満足だが不幸」というネガティブな不一致が有意に減った。小林盾、カローラ・ホメリヒ(2014)『生活に満足している人は幸福か─ SSP-W2013-2nd 調査データの分析─』
と報告しています。
生活満足度と違い、幸福度は本人の主観だとよく言われます。この主観的幸福感を測定し分析することで、何が人々の生活に影響しているかが見えてくるので、哲学に始まり、医学、公衆衛生、心理学、社会学、経済学など多様な分野の研究者がこの分野について研究しています。主観的幸福感の研究は今後も進んでいくことでしょう。