開発コンサルタントとは何か-途上国における問題解決の医師を目指して-

季節が冬から春に向かうにつれ、リクルートスーツの就活生を目にすることが多くなった。(私は今アフリカにいるが笑)

キャリタスが発表した「2019年卒の就活生が選ぶ就職希望企業ランキング:総合編」では、航空、総合商社大手が上位にランクインされている。

【総合】2019年卒 就職希望・人気企業ランキング | キャリタス就活2019 | 新卒・既卒学生向け就職活動・採用情報サイト

ランキングを見ていると、海外とのつながりが強い企業が目立つ。就活生の海外志向が高まっているからかもしれない。

海外とのつながりという点では、私が現在従事している開発コンサルタントいう仕事もこれに当てはまる。しかし恐らく就活生にとって、私の職業である開発コンサルタントという職業は非常に馴染みの薄い職業だろう。

そもそも開発コンサルタント業界の傾向として、中途採用者が多く、新卒採用社はどの企業も若干名の採用となっているため、新卒者の認知度が低いのかもしれない。それゆえ、一体全体どのような仕事をしているのか理解されないことが多いのである。

「開発コンサルタントという仕事をしています」と言うと、IT開発に関わっているのかと聞かれることも多い。”開発”をIT開発ではなく、途上国開発という文脈で理解している人でさえも、開発コンサルタントはODA事業を実施している人たちという認識ぐらいにしかないだろう。しかし、開発コンサルタントは、ODAの実施だけを仕事としているわけではない。

私自身も開発コンサルタントという職業に就いているとはいえ、その役割については理解が不足しているところがあった。だが、アフリカに向かう飛行機の中で『これからの開発コンサルティング』という書籍を読むことによって、開発コンサルタントとは何たるやについて理解を深めることができた。

せっかくなので、書籍の内容を紹介する形で、開発コンサルタントとは何かについて、説明してみたい。本書は1992年の出版とやや古いが、その内容は現在にも通じるところが多く、所謂開発コンサルタントのあるべき論についても触れているため、一読すると仕事をする上での意識も高まる。

これからの開発コンサルティング―国際協力の最前線から

これからの開発コンサルティング―国際協力の最前線から

 

開発コンサルタントは途上国の開発を助ける仕事

開発コンサルタントを一言で言うなら「発展途上国の開発を助ける仕事」だ。「途上国開発における様々な問題を解決する医者」と表現されることもある。

一般的に、国際協力・国際開発の世界では、開発プロジェクトを形成・実施する形で、援助を行っていく。ITプロジェクトが企画、要件定義、開発、運用、保守というサイクルがあるが、開発プロジェクトでも開発ニーズの認定・特定→特定されたニーズに応じて開発プロジェクトを形成→形成されたプロジェクトの計画・評価→プロジェクトの設計と実施→管理と運営→モニタリングと評価という流れがある。プロジェクトのモニタリング・評価の過程で新たな開発ニーズを発見し、再びプロジェクトを形成する一連の流れをプロジェクト・サイクルと呼んでいる。

プロジェクト・サイクルにおける開発コンサルタントの役割

こうした開発プロジェクトを実施する上で、橋本氏は開発コンサルタントは大きく二つの重要な役割があるという。それが「プロジェクトに関わる様々な人・機関の間をつなぐこと」と「プロジェクトを実施へとつなぐこと」だ。つまり、「つなぐ」ことが開発コンサルタントにとって重要な役割というわけだ。

つなぐためには様々な手段があるが、物事を前に進めていくために、各種文書の作成が有効となる。従って、各種報告書等の作成は開発コンサルタントの最も重要な役割の一つとなる。

国際機関などでも、必要な調査や研究、Feasibility Study(F/S)を通じて各種報告書を作成し、その報告書をベースにプロジェクト形成を促したり、各国・機関へ提言するという部分では似ている。

開発コンサルタントも良い開発プロジェクトを形成し、そのプロジェクトを推進していくことが主な役割である。その方法として、調査や分析をし、その結果を目に見える成果品(報告書)として次のプロセスをつなげていくこと、これが開発コンサルタントの仕事だ。

開発コンサルタントは(途上国)開発+コンサルタント

開発コンサルタントの役割について見てきたところで、今度はもう少しマクロに、開発コンサルタントという職業が、基本的にどのような方向を向いているのかについて見ていきたい。

まず、開発コンサルタントはその名前からも分かるように「開発(Development)」と「コンサルティング(Consulting)」という2つの性質を持つ。従って、開発コンサルタントのあるべき姿について考えるためには、まず「開発」と「コンサルティング」の2要素に分けて考えてみる必要がある。

開発とは(Development)

昨今、開発の概念が非常に変化してきている。開発概念の変化については、これはもう開発理論の話になるのであまり詳しく記載しないが、1960年代までは所謂国の経済成長が開発の指標だった。先進国の高度成長や工業化に倣えば、途上国もリッチになれると考え、この時期には大規模のインフラ・プロジェクトが多く実施された。1970年代はこうした開発援助に対する批判(貧富の格差拡大等)と反省から、より社会的弱者・貧困層に目を向けるアプローチが取られるようになった(Basic Human Needs)。

2000年になると、MDGs(ミレニアム開発目標)採択され、2015までに達成すべき8つのゴールが掲げられた。

さらに、2015年からはご存知の通りSDGs(持続可能な開発目標)が採択され、2016年から2030年までの国際目標が掲げられるようになった。

SDGsはMDGsの後継と言われているが、SDGsにはMDGsと比較していくつか大きな違いがある。まず、これまでMDGsの対象が途上国が主だったのに対し、SDGsは先進国もその対象に含み、SDGsの理念である「Leave no one behind(誰一人取り残さない)」という言葉に現わされるような、普遍性摂性という特徴がある。さらに、近年多くの企業がSDGsを掲げて様々な取り組みを展開しているように(MDGsの時とは大違い)、目標の達成に向けてあらゆるテークホルダー(政府、企業、NGO、有識者等)が取り組んでいくという参画性がある。また、国際的な課題は特定分野のみの課題ではなく、そこには社会・経済・環境は相互に関連性があるため、統合的に目標達成に取り組み、その取り組み内容を評価・公表するという透明性という特徴がある。

開発の概念はこのような変遷を辿ってきたが、こうした開発の概念(理論)の変遷に関わらず、橋本氏は開発の目的を「より豊かな生活環境の創造である」と定義している。「より豊かな生活環境の創造」の実現を目指して働くのが開発コンサルタントということになる。

私にとっては、開発とは端的に言ってBetter Worldだと思う。世界中の誰もが経済的な自立、精神的な自立、創造的な生活を享受し、自由と平和を感じられる世界が私にとってのBetter Worldだ。

 コンサルティングとは

昨今、コンサルタントと名の付く職業が多いのだが、そもそもコンサルティングとはどのような業務なのだろうか。Wikipediaを見ると、「コンサルティングとは、企業などの役員に対して解決策を示し、その発展を助ける業務のこと」と記述されていている。

橋本氏は本書の中で、コンサルティングとは「情報に付加価値を付けて出すサービス」と定義し、そのためには、①情報を入手すること、そして②その情報に付加価値を付けることが必要であると述べている。ここでいう情報とは、求められているものが何かを知ること、つまりニーズについての把握という意味である。

上記を纏めると(敢えて纏める必要もないのだが)、コンサルティングとは必要な情報(ニーズ)を入手(把握)し、その情報に付加価値を付けて解決策を示すことであると言えそうだ。従って、コンサルタントが他のコンサルタントとの差別化になる部分は、どのような情報を持っているか、どのように情報に付加価値を付けるのか、ということになる。

開発コンサルティングとは

以上を踏まえると、開発コンサルタントはまず、ニーズ(開発ニーズ)を的確に把握する必要があり、そのためにはその背景や現状について理解し分析することが求められ、またクライアントと十分なコミュニケーションを通じてニーズを引き出していく必要がある。そうして引き出した開発ニーズに関する情報に、付加価値をつけて実現可能な解決策を示すサービスを開発コンサルティングと呼ぶのである。

これからの開発コンサルタントについて

開発コンサルタントの本質は、ODAを実施することだけでなく、本来途上国の開発ニーズに応えるプロジェクトを発掘し形成することにある。現在開発コンサルタントが手掛ける案件の多くはODAが中心となっているが、昨年に起こったJICA資金ショート問題を契機に、多くの開発コンサルタントがODAだけに頼っていられないとして、新たなビジネスの可能性を模索し始めている。そういった意味では、開発コンサルタントの本質に立ち返る、良い機会になったとも言える。

さて、こうした中で、これからの開発コンサルタントはどのような付加価値を出すことが求められるのだろうか。私はまだ若輩ながら、開発コンサルタントの今後の方向性について大きく以下の2つの可能性を考えてみた。

まず一つ目が、マネジメント力やプラニング力の重要性がこれまで以上に増してくるということだ。SDGsが複雑化する国際課題に対して統合的な解決を目指すように、近年途上国の課題も情報化や国際化によってこれまで以上に複雑化し、またそのニーズも変化している。これまで多く行われてきた初等教育の質の向上といった技術協力プロジェクトから、今後は起業家支援やICT政策支援など、比較的新しい分野での技術協力のニーズが生まれてきている。

これまでの開発コンサルタントの多くは、専門家として自らの培ってきた技術力を活かしてその課題解決に取り組んできたが、スタートアップ政策やICTなど変化の早い分野においては、開発コンサルタントの経験と技術力だけではカバーしきれない部分が出てくる。そうなると、自らの社内(開発コンサルタント企業)リソースだけでは対応できないため、今後は特定分野の一線で活躍している人と補強契約を結び、プロジェクトに参画してもらう必要性が高まるだろう。こうした中で、開発コンサルタントは自らの技術力を活かしていく半面、内外の多様な人材とプロジェクトを進めていくためのプラニングやマネジメントといったビジネススキルがますます重要になってくると思う。

二つ目は、今後はODAだけでなく、開発コンサルタントの本質に立ち返り、民間企業と連携して途上国の開発ニーズに応えるプロジェクトを発掘し形成することが必要になってくる。既に上述したが、多様化・複雑化する途上国課題に対して、もはや開発コンサルタントの技術力だけで対応することは難しくなるだろう(もちろん個々のコンサルタントは己の技術力を磨くことを前提としても)。特にICT関連分野においては、ITに詳しい開発コンサルタントよりも、途上国進出に関心を持ったIT企業がODAプロジェクトの主体として関わってくる可能性が大いにある。

そうした中で、開発コンサルタントの強みは何かと改めて考えてみると、やはり途上国での経験とネットワークを有し、そして途上国のニーズを把握していることではないかと思う。こうした途上国のニーズに応えるために、新興国・途上国にビジネスに関心があり、既に技術力を持った民間企業に積極的にアプローチし、案件を形成していくことが今後ますます必要になるのではないだろうか。

以上、長々と開発コンサルタントについて書いてみたが、私も開発コンサルタントになってまだほんの少しの時間しか経っておらず、見る人から見れば偉そうに感じられるかもしれない。しかし、自らの職業についての役割や方向性、可能性について理解を深めておくことは重要だと思い、改めて「開発コンサルタントとは何か」について書きなぶってみた。