1. 博士過程は学者を目指す人だけの選択肢ではない
こんにちは。世界人です。
大学院修了から1年余りが過ぎ、現在は開発コンサルタントとして仕事をしていますが、現在PhDを取得する為に大学院博士課程に進学するかどうか検討しています。大学院修了後にも博士課程への進学を一瞬検討しましたが、その時は費用面の負担や早く社会に出て実務に携わりたかったことから、断念しました。
しかし日々国際開発の資料に触れ、また仕事を進める過程で様々な事例・データに触れる中で、実務と学術の架け橋としてPhDを考えても良いのではないかと考え始めました。今後仕事で途上国の現場に赴く機会が増える予定なので、集めたデータや事例をアカデミックにまとめてアウトプットしたい気持ちも湧いてきました。
博士課程をというと、その将来は研究職というイメージが強いのですが、国際開発の分野では博士号を持った実務家が少なくありません。世界銀行の採用Q&Aを参照すると、世界銀行ではエコノミストの多くが博士号を取得しているされています。
2. 社会人博士の増加とメリット
しかしながら博士号というのは課程に進めば誰でも取得できる易しいものではないことも承知しています。特に文系になると課程を終えても論文が認められず博士号が取得できなかったり、博士号を取得しても就けるポストがなくアルバイトや非正規雇用で食つないでいくしかないという現実もあります。

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また、授業料も無料ではありません。国立大学では入学金282,000円に加えて年額授業料が520,800円x3年間で総額1,844,400円掛かる見込みとなります。さらにここに書籍代や諸々の研究費が発生します。フルタイムで在籍する場合、学費や生活費の負担に加えて将来への不安を抱えたまま研究する可能性が高く、そこにはとてつもないストレスとプレッシャーがあると予想できます。
こうしたリスクを軽減する選択肢の一つとして、近年は社会人博士が注目されています。社会人博士とは、文字通り社会人でありながら(企業などに属しながら)博士課程のプログラムを受講するものです。企業に籍を置いたまま、通常の博士課程に通学する社会人もいれば、近年増えてきた大学が提供する社会人博士プログラムに通学する社会人もいます。
下の表は科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)が調査した過去30年間の博士課程進学者数の推移とその内訳です。グラフによると2015年度の大学院修士課程入学者数1.5万人となっており、2003年をピークに減少傾向にあります。ところがその内訳をみると、2003年頃から社会人入学者数は増加傾向にあり、2003年度時点では全体に占める社会人入学者の割合が22%ですが、2015年度では38%と約2倍になっています(科学技術指標2016・html版 | 科学技術・学術政策研究所 (NISTEP))。
もちろん、学位を取得するという目的から考えた場合、仕事を続けながらの博士課程を非常にタフな闘いであるに違いありません。限られた時間の中で質の高いアウトプットを出さなければせっかく投資ししても学位取得に至ることができずにリターンに結びつかないリスクはあります。研究のみに専念しているフルタイム研究生と仕事しながら研究している人と、求められるアウトプットの質は同じなのですから。
また、フルタイム学生と比べ、社会人博士は経済的基盤はある程度確保できるかもしれませんが、家族がいる場合は家族の理解が必要になってくるでしょう。子どもがいれば当然お金もかかります。よくよく話し合っておく必要があるようです。
以上述べたように、社会人博士とてリスクは抱えています。しかし、それでもフルタイムの学生と比べて社会人博士にはいくつかのアドバンテージがあることも事実です。
以下はざっと思いついたメリットになります。
・自身の研究と関連するデータを仕事をしながら得ることができる
・博士課程修了/中退後の就業におけるリスクヘッジになる
・社会に接点があるため、市場感覚をキープできる
3. 大学院をどう選ぶか
さて、それでは大学院をどのように選べばよいのでしょうか。
通常は修士課程でお世話になった研究室にそのまま残ることが一般的のように思われます。しかしながら私のように海外の大学院を出て日本の大学にパイプがない人や、仕事をやる中で新たな研究領域を見出した人などは様々な研究機関から自分に合った研究室を選ぶ必要があります。
私が現在2つの選択肢を模索しています。
1つは社会人の受け入れを積極的に行っている国内の大学院
2つ目は学費の安い欧州の大学院プログラムに、日本を拠点にして通うことです、
大学院はそれぞれ特性が異なります。生粋の研究者を育てる目的の大学院では、社会人博士を積極的に受け入れたがらないところもあるでしょう。逆に実務を重視する大学院では、社会人博士の受け入れ態勢が整っているように思います。社会人博士という長い長い大海原を超えていくには、実務経験が豊富な教授がいる研究室や大学院側の社会人博士の受け入れがしっかりしている環境を選んだほうが良さそうです。
2つ目の選択肢は、すでに私の友人が何人か実践している方法です。例えばドイツやスペインなどはEU圏外の学生でも安い学費で博士課程への受け入れを認めています。友人の一人はスペインの大学院で1年に数回現地で指導教授とミーティングを行い、あとは日本を拠点に働きながら研究を続けています。これは正規のルートというよりも、入学前に指導教授との面談・交渉をすることで認められるケースだそうです。また、学費はけた違いに高くなりますが、英国の大学院ではパートタイム(5年)の博士課程を受け入れており、こうした場合でも日本を拠点にしながら研究を続けることは可能になります。
私自身が具体的にどうしていくかは、もう少し情報を集めながら検討していこうと思います。
4. 社会人博士を修了された先輩たち(情報源)
社会人博士というのは実にマイナーだと思います。博士課程に占める割合が増えたとはいえ、約1.5万人の38%、つまり約5,700人。しかし、現在はインターネットを通して"社会人博士"というマイナーな情報を集めることができます。
社会人博士に関する情報を発信しているブログをいくつか紹介して、終わりにしたいと思います。
社会人の博士号取得に対して特別プログラムのある大学を調べてみた | 論文博士を取得した企業研究者のブログ