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世界の学びログ

「STEAM」人材とは?-人間の潜在能力を伸ばす新しい教育

知識基盤型社会(Society 5.0)

既に多くの人が認識している通り、狩猟社会( Society 1.0)から農耕社会( Society 2.0)、工業社会( Society 3.0)を経て情報社会( Society 4.0)に至り、そして現在は知識基盤型社会(Society 5.0) に向かっています。

文部科学省が発表したレポート『Society 5.0 に向けた人材育成~社会が変わる - 文部科学省』の中では、Society 5.0 は、

人工知能(AI)、ビッグデータ、Internet of Things(IoT)、ロボティクス等の先端技術が高度化してあらゆる産業や社会生活に取り入れられ、社会の在り方そのものが「非連続的」と言えるほど劇的に変わることを示唆するものであり、第5期科学技術基本計画(平成 28 年 1 月 22 日閣議決定)で提唱された社会の姿

と定義されています。

当然社会が変われば、その社会に必要とされる人材も変化します。つまり、知識基盤型社会(Society 5.0) において、学びや仕事の在り方も変化していきます。

小学生の「将来の夢」で上位に挙がる職業がYoutuberになるなど、既に生まれたときからタブレットが身近にあり、学生時代からインターネットやパソコンのある生活環境の中で育ってきたデジタルネイティブと言われる世代は、コミュニケーションの方法や考え方がそれまでの世代と異なっているといわれています。

こうした知識基盤型社会に向かっていく中で、「AI によって仕事がなくなる」「AIによって人間性が失われていく」など、AIなどの技術が自ら人間より賢い知能を生み出す事が可能になるシンギュラリティ(技術的特異点)という言葉もよく耳にするようになりました。(ちなみに巷ではシンギュラリティは「収穫加速の法則」から2045年に起きるといわれています。)

このような社会を迎えているからこそ、私たちはこれまで以上に「人間がすべきことが何か」、つまり「人間とは何か」について問われるようになりました。

そして今回紹介するSTEAM人材とはまさにこうした「人間性とは何か」を問いかけながら、人間を重視する考え方や人間を大切にする思想を持った人材のことを意味します。

STEMからSTE「A」Mへ

ジュテーム(Je t'aime)フランス語で「愛している」を意味しますが?、STEAMはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics (数学)のそれぞれの頭文字を取ってSTEAM(スチーム)と呼ばれています。

実は、STEAMの前身として、Arts(芸術)を除いたSTEM教育というのがあり、21世紀の初頭から米国で急激に広まりました。

その背景には国際学力調査(PISAやTIMSS)の普及によって、米国の「科学的リテラシー」や「数学的リテラシー」の水準が他国と比べて相対的に低いことが視覚化されたことがあります。国際学力調査の結果に危機感を抱いた米国は、幼児教育から高等教育まで一貫してSTEM教育を拡充することを国家戦略の柱として掲げるようになりました。

2010年代に入ると、これまでSTEMとは対極的に考えられていた芸術(Arts)への注目が次第に高まるようになります。様々な研究を通じて、芸術が人間の社会的な能力を向上させる可能性があることや、芸術領域へのトレーニングが科学的分野への能力を向上させる可能性が注目されるようになったのです。さらに、芸術は学びに関する様々な行動特性を向上させるという議論も加わり、これまでのSTEM教育から芸術(Arts)を加えたSTEAM教育への重要性が高まっていきました。

STEAM人材とは何か

『世界を変えるSTEAM人材 シリコンバレー「デザイン思考」の核心 』では、STEAM人材を非常に分かりやすく説明しています。

本書では諸説あるSTEAM人材のコンセプトを目的、マインドセット、方法論という3つの視点から分かりやすく説明しています。

目的は「新しいヒューマニズム」

STEAM人材は「人類の役に立ちたい」という熱い思いを持ち、「人間とは何か」を絶えず問い続ける姿勢を持った人材です。

マインドセットは「イノベーター」

STEAM人材は、①型にはまらない、②ひとまずやってみる、③失敗して、前進するというイノベーターのマインドセットを持ち、新しいアイディアでイノベーションを起こして問題解決をすることのできる人材です。

方法論は「デザイン思考」

STEAM人材は、ユーザ自身気づかないような潜在的なニーズを吸い上げて発想し、物作りにつなげる行為であるデザイン思考を使って問題解決を行う人材です。デザイン思考とは、デザイナーが「ものづくり」の際に用いる思考・方法ですが、STEAM人材が持つデザイン思考とは、「人間が本当に必要としているものを見極めること」、つまり「なぜ作るのか」(why)という問いから始まり、「何を作るのか」(what)を発見し、「どう作るのか」(how)を模索するプロセスを意味します。

世界を変えるSTEAM人材 シリコンバレー「デザイン思考」の核心 (朝日新書)

 

 さらに注目されているのがSTEAM「S」人材

以上紹介したSTEAM人材も比較的新しい概念ですが、最近、このSTEAMにさらにSを加えてSTEAMS(スティームス)人材が注目を浴びてきています。

この最後の「S」はずばり、Sports(スポーツ)です。STEAMS人材についてはまだ多くの文献があるわけではないですが、STEAMを基本としつつ、その考え方をスポーツの世界にまで応用するというものです。

例えば、スポーツでは記録がすべて数字化されます。記録だけではなく、フォームなど数値化できる要素が多いため、スポーツには数学・技術・科学・工学が密接に関わっているといえます。こうしたスポーツの中で、データ解析(統計)などの科学的手法を学んでいく、というのがSTEAMS教育の一つとなっています。

 

新型コロナウィルスの影響により、教育の在り方も今後変化していきますが、改めてこれからの時代にどのような人材が求められていくのかを再確認した上で、その人材を育成するために何をすべきかを検討していく必要があるのだと思います。